多汗の原因として考えられる疾患
微熱を伴って汗が出る場合は、感染症の疑いがある。また、糖尿病の治療中で急に汗が出てきたときは、低血糖状態になっている場合がある。
甲状腺機能亢進症の初期の徴候として、異常に汗をかきやすくなる。また、高齢の肥満者で心機能への負担がかかりすぎるとちょっとした動作で多くの発汗をみる。脳卒中後遺症の患者様では、障害半側部の発汗調節機能も障害を受けており、部分的に汗が多く出る。
アルコール中毒症患者でも、発汗異常がみられる。様々な不安による自律神経失調症の症状の1つにも発汗異常がある。
この患者様の状態を見てみると、多汗の症状は見られるものの、頻脈や体重減少、甲状腺腫大などの特徴的症状が見られず、甲状腺機能の異常とは考えづらい点も多い。
また、この患者様の特徴的な症状である口渇の原因として考えられるものは
1.腎臓からの水分の大量放出(腎盂腎炎、尿崩症、糖尿病に伴う浸透圧利尿など)
2.腎外性大量水分喪失(嘔吐、下痢、発汗過多など)
3.意識障害、衰弱状態、嚥下困難などで水分摂取が不十分なとき
などがある。
この口渇に加えて多飲の症状もあることから、糖尿病を疑われて尿検査を行ったところ、糖や血尿が認められた。尿に糖が出るということは、血糖値が180以上であるということである。血尿は膀胱炎のためと考えられる。
*HBS・・空腹時血糖。110以下を正常とする。126以上で糖尿病を疑う。
*HgA1c・・ヘモグロビンA1c。ヘモグロビンにブドウ糖が非酵素的に結合したもの。これが高値を示すということは、過去1〜2ヶ月の間血糖が高いということ(血糖が高いと、それに応じた量のHgA1cが生産されるから)。糖尿病の診断にはHgA1cが重要になる。空腹時血糖などは食事の時間や、検査前日に食事を取らなかったりすると減少するが、これは前日や直前の食事の影響を受けずに診断が出来る。その他に、HgA1cは糖尿病患者の血糖コントロールの状態を見るための指標として利用されている。
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