吐血を起こすような病態として考えられるもの
1.胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍
2.食道静脈瘤
3.胃悪性腫瘍(がん)
4.出血性胃炎
5.マロリー・ワイス症候群など
・胃、十二指腸潰瘍は繰り返し再発することが多く、一度出血を伴った潰瘍では再出血しやすい。NSAIDsの使用は経口服用だけでなく座薬でも潰瘍の原因となる。
・食道静脈瘤は肝硬変の人にみられる。吐血は静脈瘤が破裂し出血することによるが、鮮紅色で比較的多量の出血が生じる。
・マロリー・ワイス症候群は嘔吐をくり返す時に粘膜に傷が出来て出血するものでお酒の飲み過ぎでしばしばみられる。
黒色便について>
黒色便の原因としては、上部消化管からの出血が考えられる。赤血球中に含まれるヘモグロビン内の鉄分が胃液の塩酸で酸化され、塩酸ヘマチンとなり、これが黒色調を呈し、コールタールに似た下血となるので、タール便とも呼ばれる。
黒色便といっても、出血以外の原因も考えられる(のり、イカスミなどの黒い色の食べ物の多量摂取や、抗生物質や造血剤を服用することで便が黒っぽくなることもある)ので、きちんと便潜血検査を行って、黒色便の原因が血液なのかということを確かめる必要がある。
ガスター(ファモチジン)
適応:胃潰瘍、十二指腸潰瘍、上部消化管出血、逆流性食道炎、胃炎など
*ガスターには、ガスターとガスターDがあり、内服が困難な人にはガスターDを使う。(ガスターDは舌下溶錠。)
ガスターはタガメット(シメチジン)と比べて、薬物相互作用も少なく、比較的安全性の高い薬として消化性潰瘍の第一選択薬として汎用されている。
セルベックス(テプレノン)
作用:胃粘膜・胃粘液層中の粘膜修復第一因子である高分子糖蛋白質の合成を促し、粘液中のリン脂質の濃度を高め、粘膜防御能を高める。さらに、胃粘膜病変に伴う粘膜増殖帯細胞の増殖能の低下を改善する。
適応:1)以下の疾患の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善:急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期 2)胃潰瘍
副作用:肝機能障害 便秘 腹部膨満感など
*セルベックスは単独で投与しても消化性潰瘍の治療としてそれほど効果がみられるものではない。あくまで、H2受容体遮断薬との併用薬というのが適切かもしれない。 |